Sala MASAKA

Factory(工場)

Factory(工場)No.1

工場に案内され、いざその空間に入ってみると、イメージしていたオートメーション化の進んだハイテク産業の場では全くなく、職人一人一人が芸術家のような存在で、 目の前の板材と向き合い、黙々と作品を完成に導いているように感じられ、空間は言わば大きなアトリエのような印象でした。【写真①②】

 響板になる予定の板が多数 保存されている乾燥室を見せていただきました。【写真③】
 ピアノ製作で最も大切なことの一つが素材選びだそうで、特に響板はそのピアノの音色を左右する重要なパーツ。響板にはバイオリンの表板としても使われるスプルースが使われているそうです。創業者アントニーン・ペトロフの代から受け継がれてきた木材厳選のノウハウを生かし、ペトロフ社内の専門家がヨーロッパ中の木材を視野に入れ、木目の表情や年輪の形・細かさなどの状態を見て選んでくるそうです。 
 ペトロフピアノは使用されている素材のほとんどがヨーロッパ原産でかつ高品質であることが認められ、2007年にEuropean Excellence認証(EEX)を取得。当サロンのペトロフにもEEX印がつけられています。【写真④】

 選び抜かれた板材が何枚か貼り合わされて一枚の大きな板となり、その板が響板の形にカットされるのですが、響板に含まれる水分量を減らすことがとても重要だそうで、その為に木材を長期に渡り乾燥させ、規定の水分量まで水分が減少するのを待つのだそうです。
 乾燥工程を終えた響板の製作現場に案内されました。響板の裏面になる面に 何本もの細長い棒が綺麗につけられていました。これは響棒というもので弦の振動を響板全体に広げたり、響板の強度を上げたりする目的のものだそうです。また、響板の表の面に接着される長短2つの駒が準備されていました。木の色がとても綺麗でした。【写真⑤⑥】
 

 次のブースでは太さ様々な弦の束が吊り下げられており、その付近で職人さんが芯となる弦に銅線を巻き付けていました。年季の感じられる横長の機械のペダルを足で操作し、機械の回転スピードや巻きの強度を手と足を駆使して調節しながら一本一本 手作業で仕上げています。これは低音域に使われる弦で、この巻き方の良し悪しも音色や響きに大きな影響を与えるそうです。熟練の技を見せていただきました。【写真⑦⑧

 

Factory(工場)No.2に続く……

 

①②ペトロフ工場内の様子。
③響板になる予定の木材 ④EEX印(Sala MASAKAのペトロフ)
⑤響棒がつけられた響板の裏面 ⑥2つの駒が接着される響板の表面
⑦弦の束 ⑧弦に銅線を巻き付ける職人

Factory(工場)No.2

 板材を何枚も継ぎ合わせて細長くし、その細長い板を何重かに重ねて厚みを持たせた木材が、ピアノの形の型に合わせて形づくられ、グランドピアノの側板となって運ばれてきました。ここでは側板と、既に黒く着色されていた支柱が合体されていました。(支柱はグランドピアノを下から覗いた際に見える太い柱で、後に響板が乗せられその支えとなる土台部分です。)【写真⑨】
 その後、側板は塗装され、響板と、別ブースで完成された鉄フレームが合体。
弦が張られ、アクションと鍵盤も加わり、ボディーの完成です。【写真⑩】

 弦が張られたブランドピアノが機械により強制的に打鍵されていました。弦の張力の確認、鍵盤の深さを整える、耐久性の試験、などが目的とのこと。機械が一定のテンポでランダムに複数の鍵盤を打鍵していました。【写真⑪⑫】

 最後に行われていたのが調整です。調整は非常に大切な作業だそうで、音の高さを合わせる調律だけではなく、鍵盤の深さやタッチのバラツキを無くしたり、ハンマーの形や硬さを整えたり、ダンパーに偏りがないかなど、全ての鍵盤の全てのパーツを確認して整え、アクションの動きもチェックし、ぺトロフの伝統の音色を引き出せるように調整するのだそうです。【写真⑬⑭】
 調整作業をしている【写真⑬】の職人さんは数十年、このお仕事をしていらっしゃるとのこと。当サロンのペトロフの調整も、この方が担当してくださったのだそうです。

 多くの過程を経て完成されたピアノ。行き先の決まったピアノが箱に収まります。
これで工場見学は終了です。【写真⑮】

 今回、ペトロフ工場を見学させていただき、一台一台のピアノが、いかに手間暇をかけて造られたものであるかを実感しました。
 工場内には大きなベルトコンベアのようなオートメーション設備はなく、ピアノを隣のブースに移動させるのも、ピアノを台車に乗せて固定し、職人が手で押していくという  いたってシンプルなものでした。

 コストパフォーマンスやタイムパフォーマンスが求められ、AIと共存するようになってきた現代において、あえてローテクを継続し、160年前からの様々な手法を維持しているところにペトロフの伝統と音色の秘密があるのではないかと感じました。工場の中心に素敵なスローガンが掲げられていました。【写真⑯】



【チェコ共和国 ペトロフ本社訪問記】
はじめに
Museum(博物館)編
Factory(工場)編
Gallery(ショールーム・カフェ・ホール)編
あとがき
⑨側板と支柱が合体 ⑩側板・支柱・響板・鉄フレーム・弦・鍵盤・アクション/ピアノの内部の完成
⑪⑫自動打鍵機
⑬グランドピアノの調整 ⑭アプライトピアノの調整
⑮出荷の準備 ⑯工場の中心に掲げられているスローガン「ペトロフブランドの伝統の集結」

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